『天使と悪魔』と反物質とシンメトリーと4元素説

事実

世界最大の科学研究機関である、スイスのセルン(欧州原子核研究機構)が、反物質粒子の生成に先ごろはじめて成功した。
<中略>
反物質1グラムが有するエネルギーは、20キロトンの核爆弾に相当する。これはヒロシマに投下されたものとほぼ等しい

「天使と悪魔」 ダン・ブラウン 角川文庫より

などという文章を見たものだから忙しくてしょうがないのに海老名まで「天使と悪魔」を見に行ってきました。
これは『ダビンチコード』の著者の作品です。


この映画、「セルン」の「反物質」ということで、僕の母校である東京大学理学部物理学科に所属する原子核実験の早野教授のことか?
と思い、久しぶりに早野先生のホームページをアクセスしたところ、
http://nucl.phys.s.u-tokyo.ac.jp/hayano/jp/


やっぱりトップに反物質の研究がのってるし、『反物質研究の現状 - 「天使と悪魔」の虚と実 - 』について記者会見と関連ホームページも発見。
http://nucl.phys.s.u-tokyo.ac.jp/hayano/angles_and_demons_fact_vs_fiction/FACT.html


すごいです。



ついに反物質ブーム』がきましたかという感じです。今年の後期の芸術学部の物理学概論でエヴァンゲリオン宇宙戦艦ヤマト陽電子反物質の話をする予定でしたが、早野先生の研究も紹介しようっと。


しかも僕は学位とって東大を卒業する直前に早野先生の授業のTAをしていたし、僕の所属が東大理学部物理学科原子核理論研究室だったので、すぐ近くだった先生なので感動です。これで東大理学部物理学科の人気は倍増とか?





さて、この『天使と悪魔』という映画、『ダビンチ・コード』とセットで見ると面白いです。


『ダビンチコード』は形の面からは黄金比フィボナッチ数列など『比』を中心とした話題です。それに対し、
『天使と悪魔』は形の面からは『シンメトリー』と『4元素説』の形を中心とした話題です。


『シンメトリー』と『黄金比』は西洋の美の重要な構成要素なのです。


いろんなところに『シンメトリー』が出てきます。よおく注意してみてみてね。






さて、実は『反物質』もシンメトリーと関連しています。

最も美しい、数学的に調和のとれた性質、対称性(シンメトリー)。ディラックはそれを追い求め、ついに物質にもマイナスがあること、反物質の存在に気づく。

反物質はいかに発見されたか ディラックの業績と生涯 丸善

とあるように、本来自然のシンメトリーが破れていなければ、物質、反物質のシンメトリーがあるのです(実際にはこの世界は物質だらけなので、なぜ反物質でなく物質ばかりなのかという研究がおこなわれています)。