[]物理学の魅力

「物理学」と聞いて今の大学生、高校生はどう思うのだろうか?

僕らが高校生の頃はというと、物理学は憧れの的であった。ノーベル物理学賞をとった小柴さんの著書に「物理屋になりたかったんだよ」という本がある。「物理屋」だけでなく「物理学徒」といった言葉さえもあった。物理関係の人々は「原子核やっているんだ」とか「物性をやっているんだ」とか「素粒子やっているんだ」というより、

  「物理をやっているんだ!」

という意識が強いと思う。


物理学とは、この世界がどのようにしてできているかを解き明かそうとする学問である。そして20世紀は相対論、量子論に代表されるさまざまな理論が発展し、「20世紀は物理学の世紀」とさえ呼ばれた。ビッグバンなど、宇宙のはじまりまでも物理学が議論してきた。これだけ魅力的な学問であるにもかかわらず、最近は昔ほど物理は人気がないように感じられる。


何故だろうか?


幾つか理由はあると思われるが、とりあえず2つほど考えてみた。

一つは学生に物理とは難解でわかり難いもの。理系のエリートがやるもので、少なくとも文系の人間がかかわるようなものではないという印象を与えてしまったことであろう。物理の人々の中に、エリート意識がある人々がいるのもまた確かではある。

もちろん、物理学には難解なものもある。しかしそれは、化学にも生物にも文学にも法律にも芸術にも、どんな学問にもある。だからそんなものはおいといて、だれでもわかる範囲で物理を楽しめばいいのだと思う。


二つ目は、物理学の人気に甘んじて、世間の人々にわかるような言葉で説明してこなかったこと、そして世間の人々に、物理学の魅力を伝えることを軽視してきたことであろう。


これは物理のコミュニティが変わっていかなければならない問題である。例外的に宇宙の人々は世間の人々にその学問の魅力を伝えているように見える。色々なDVDを見ても日本の宇宙関連の先生はよく出てきてあつく語っているが、それ以外の分野の先生は世間の人々はあまり見かけないのではないだろうか。

この間、ある分野のビデオを見ていたら、外国の教授ばかりが出演していた。
日本の物理の人々が、若い人々への物理の素晴らしさのアピールにもっと力を入れていけば、物理の人気は回復すると思う。

人は面白い、魅力のあるものに興味をもっていくからである。

少なくとも私は、文系の学生に教えている以上、これからも物理の魅力、すばらしさをアピールしていきたいと考えている。